It's so hopeless
「ん…じゃあそこらへんの椅子に座って待ってて」
ゼロが紅茶の準備のため、一旦部屋を出ていく。
一人残された私は一番近くにあった椅子に座り、部屋を観察することにした。
部屋の中央に大きめな机。いつから使用しているのか、がたがきている。
ざっと見た感じ、この部屋の家具は古いものが多い。
私が今座っている椅子もそう。少し軋む。
壁伝いに設置された本棚には古そうな書物がぎっしり。
部屋の隅の方にいくつか本が積み重なっていることから、ゼロは普段この本を読み漁っているようだ。
「ロイ…今頃何してるのかな――」
ぽつり口から零れた言葉。
鍵の手掛かりが少しでも見つかればいい。
物知りなゼロに聞けば何かしら情報は掴めそうだ。
「―――はい、お待たせ。
紅茶とケーキを持ってきたよ」
音もなくゼロが登場。
声をかけられなかったら気付かなかっただろう。
「ケーキ…手作り?」
私はゼロがトレーに乗せて運んできたケーキを指差した。
苺までのって可愛らしく豪華なケーキ。
「ん?そうだよ」
ゼロは得意そうに胸を張る。
格好つけているつもりなのか、髪をわしゃわしゃと立てている。ワックスでもつけているのだろうか。
「もしかして自分の誕生日ケーキ?」
しまった。
思ったことをそのまま口にしてしまった。
恐る恐るゼロを見やると、図星だったのかうなだれている。
「こう年を重ねると、誕生日を祝ってくれる人も減るわけで……自分で自分を祝うしか…………」
ぶつぶつと呟くゼロは魂が抜けそうなくらい無気力。
私はご長寿は悩みが多くて大変なんだと肝に命じた。