It's so hopeless
私が落ち着くまで、ゼロは何も言わずに傍にいてくれた。
優しい悪魔。
どこまでお人好しなんだよ…。
私は涙の乾かないまま、微笑した。
「ソラ…」
ゼロもほっとしたように笑った。
白紙だらけの本。
ゼロは再度確認の為、パラパラとページを捲っていった。
「俺もこんな本初めて見たよ…。
題名は知ってたけど開いたことがなかったから」
首を傾げながら、一枚ずつページを確かめていくゼロ。
相変わらず白紙のページが続く。
残りのページも僅かになってきた頃、ゼロの細く長い指の動きが止まった。
「――ソラ、見て」
ゼロが開いているページ。驚くべきことに、文字が記されている。
印字ではなく、誰かの走り書き。
ページの右下、斜めに書かれている言葉…。
目で追って読んでみて驚愕する。
――私はそれを知っている。
だってそれは、ロイがいつの日か口ずさんでいたあの歌の歌詞と同じだったから。
忘れもしない、哀しくも美しいあの歌が……追憶の彼方でまた聞こえてきたような気がした。