It's so hopeless
「―――この歌…いつだったかロイが歌ってた……」
私の本を持つ手は震えた。
ゼロは何も言わずに私を見つめる。
見慣れたはずの真っ赤な視線が今日は違って見える。
ロイの歌…。
儚く消えてしまいそうなそんな歌。
「なぁソラ…、そのロイって何者なんだ?」
ゼロの質問を受け、初めてロイという存在への疑問に気付かされる。
今まで深く考えたことはなかった。
言われてみれば…とはこのことだ。
ロイは何者?
「ロイは何者…なんだろう」
私は自分に問い掛けるように数回、繰り返した。
脳裏に浮かんだロイの姿。
雪兎の如く白いふわふわの髪。
身体を包帯に覆われ、鳥籠に監禁された身。
謎多き少年。
自分を隠し、世界の夢を見て眠る…。
「……私、ロイのこと何も知らないのかもしれない……」
ゼロは本に視線を戻した。
眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。