It's so hopeless
「綺麗な夜だね…。ソラはどうしてここに?」
朧気な月を見上げ、リゲルは目を細めて頬笑んだ。
青い涙のアザはまるで道化師の化粧。
笑っているのに泣いているように見えて不思議。
「私は真実の廻廊から帰るところ。
外に出たらすっかり日が落ちてて真っ暗でさ。ランプ持ってて本当によかった」
“リゲルは何してたの?”
ランプを掲げ、私は尋ねる。
「ああ、俺。
俺はちょっと暇潰し」
そう言ってはにかむリゲル。紫電の瞳が暗闇で映えて幻想的。
青黒いリゲルの髪は夜闇に溶けるように風に揺れて棚引く。
「――アルファの所言ってたくらいだからソラも訳ありか?
何があったら知らないけど、あんまり悩むのはよくないな」
「えー、何でわかったの?」
私が目を丸くしていると、リゲルは口角をすっとあげた。
「だって辛気臭い顔して歩ってたから。わかりやすいんだよ、ソラは…。
―――あ、悩みがあるなら俺の遊園地に寄っていきなよ。少しは明るい気分になるかもよ?」
リゲルの遊園地。
真夜中だけ開園する、不思議な“月影の遊園地”。
「――そうだね。悩んでばっかはよくないよねっ。
よしっ。リゲルの言葉、有り難く甘えさせてもらおうかな」
リゲルの頬の星が月明かりに照らされて、本当に輝いたかのように見えた。
「じゃあ、ソラ。俺についてきて」
どこか嬉しそうなリゲル。
“うん”
頷く私の顔も幼い子供みたいに笑っているのだろうか。