It's so hopeless



「綺麗な夜だね…。ソラはどうしてここに?」


朧気な月を見上げ、リゲルは目を細めて頬笑んだ。

青い涙のアザはまるで道化師の化粧。
笑っているのに泣いているように見えて不思議。




「私は真実の廻廊から帰るところ。
外に出たらすっかり日が落ちてて真っ暗でさ。ランプ持ってて本当によかった」


“リゲルは何してたの?”

ランプを掲げ、私は尋ねる。



「ああ、俺。
俺はちょっと暇潰し」


そう言ってはにかむリゲル。紫電の瞳が暗闇で映えて幻想的。
青黒いリゲルの髪は夜闇に溶けるように風に揺れて棚引く。



「――アルファの所言ってたくらいだからソラも訳ありか?
何があったら知らないけど、あんまり悩むのはよくないな」


「えー、何でわかったの?」


私が目を丸くしていると、リゲルは口角をすっとあげた。



「だって辛気臭い顔して歩ってたから。わかりやすいんだよ、ソラは…。


―――あ、悩みがあるなら俺の遊園地に寄っていきなよ。少しは明るい気分になるかもよ?」



リゲルの遊園地。


真夜中だけ開園する、不思議な“月影の遊園地”。




「――そうだね。悩んでばっかはよくないよねっ。

よしっ。リゲルの言葉、有り難く甘えさせてもらおうかな」


リゲルの頬の星が月明かりに照らされて、本当に輝いたかのように見えた。



「じゃあ、ソラ。俺についてきて」


どこか嬉しそうなリゲル。

“うん”


頷く私の顔も幼い子供みたいに笑っているのだろうか。




< 66 / 77 >

この作品をシェア

pagetop