It's so hopeless





賑やかな音楽に誘われるように、私とリゲルは遊園地へと辿り着いた。



古いながらも、光を失わないゲート。
どこか寂しさと温かさを感じさせるレトロな装飾が、私は懐かしくて堪らなかった。




「――なんだろう…?
なんだか懐かしい」


私の呟きに、リゲルは頷く。


「ここに来る人はみんなそう言うよ」




リゲルに促されてゲートをくぐる…。




小さな観覧車。
古びた回転木馬。
月影に照らされた空中ブランコ。



古く、小規模な遊園地…。どこか懐かしく、そして淋しい。


この気持ちを何と呼ぶのだろうか…?






「ソラ。
ようこそ、ここ“月影の遊園地”へ」



リゲルは紫電のような瞳を細め、綺麗な笑みを浮かべた。



そう…道化師は笑う。
泣き顔の化粧に浮かべる笑みはどこか悲しくて、切ない。



「なんか不思議。
リゲルって笑ってるのに泣いてるみたいに見える。」

私が言うと、リゲルは自身の右目の下青いの涙のアザに軽く触れた。



「――ああ、よく言われる。
自分でもたまに思うしな。

でも、みんなそうだろ?
笑ってるのに心では泣いているとか、本当は泣きたいのに無理して笑うとか…。
そういうのとあんまり変わらないんじゃないか?」



“確かにそうかも”


リゲルの言葉に妙に納得。


――みんな言葉や顔に出さないだけ。本当の気持ちは本人の心にしかわからない。





「―――あ、シリウス呼んでくる。
あいつ、ソラが来たって知ったら絶対喜ぶから」


「了解ー。待ってるから」


リゲルは私に、回転木馬の入り口前のベンチに座るよう促し、奥のテントの方へと駆けていった。




一人ベンチに腰掛け、眺める遊園地。

幼い頃、自分の描いていた空想と少し似ていた。


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