It's so hopeless
誰も乗っていないのに、回転木馬は音楽に合わせて廻り、白い木馬たちは、誇らしそうに舞台の上を踊るように駆ける。
優しい夜。
ロイにも見せたいこの光の世界。
「――ソラっ」
ふいに明るく澄んだ声が私を呼んだ。
「シリウスっ。何だか久しぶり」
リゲルの双子の妹、シリウス。
リゲルと同じ、青みがかった黒髪は女の子らしいショートヘア。
宝石――アメジストのような紫の瞳もリゲルと同じ。
そして何より目を引くのは、リゲルと同じ目の下のアザ。アザを右目に持つリゲルとは対称的に、シリウスのアザは左目にある。
「うんうん、久しぶりだねー。
リゲルからソラが来たって聞いたから嬉しくって」
きらきらとしたシリウスの笑みはやはりリゲルに似ている。
「へへへ。そう言ってもらえて私も嬉しいよー」
輝いて光の王国。
舞い踊る木馬に願いを乗せる。
「――そうだ。
三人でメリーゴーランド乗らない?」
シリウスの提案に、私はしっかりと頷いて賛成する。
途端にシリウスの表情がぱっと明るさを増した。
「よしっ。じゃあ決まりね。
リゲルーっ。ソラとメリーゴーランド乗るよー」
“ああ”
少しぶっきらぼうな様子のリゲルに、私たちは顔を見合せてくすくすと笑った。