It's so hopeless
リゲルとシリウス。
二人と共に回転木馬に駆け寄った。
先程までひとりでに動いていた木馬たちは、リゲルたち双子が近づくと、すっと停止した。
「さぁ、乗って」
リゲルが慣れた手付きで回転木馬の周りの柵の扉を開く。
ギィギィと錆びた音を立てる扉に哀愁を覚える。
「ありがと」
私はふと目についた小柄な木馬に座った。
あまり大きくはない白い木馬。
温かみのある表情の木馬はどこか誇らしげに映る。
「何だかこの馬嬉しそう…」
私の小さな呟き。
今にも馬の嘶きが聞こえてきそうだ。
「そうだよ。この木馬たちには幾つもの思いが染み付いてるから。
この遊園地には心が通っているの」
シリウスが愛しそうに木馬を撫でる。
穏やかな表情のまま制止しているその木馬はシリウスを背に乗せ、動きだす時を静かに待っていた。
「それでは、発進します。
光の幻想に君の思いを映して……」
リゲルの静かな言葉で動きだす景色。
走りだした木馬たちは月の光から命を得たかのように生き生きと踊る。
くるくる廻る遊園地の景色。
光と音楽の幻想に、私は不思議な気持ちになる。
光、影
光……
走馬灯のように廻り廻って光と影が作りだす夢物語は、私に“君”の幻を見せる。
『ソラ』
白く柔らかな髪を揺らし、儚く笑う君。