It's so hopeless


ロイは私の顔を見たことがないし、私もロイの包帯の下の瞳を見たことがない。



ロイの身体には白い包帯が至るところに巻いてある。

見たところ腕…、首…、鼻から目にかけて。





痛々しく、儚く、切ない。

それが初めてロイに出会い、感じたことだった。





一度だけ、ロイに包帯を巻く理由を聞いたことがある。






『怖い』



ただそれだけ。
ロイはそれだけ言うと、悲しげに空を見上げた。



あの時の澄んだ碧空…。
ロイに見えるわけもない景色。



ロイの思い浮かべる空はどんな空だろう…。




あの時以来、そのことについて私が触れることはなかった。









「ロイ、今日は何の話をしようか?」




私の声にロイは健気に声の出所を探す。




「ロイ、私はここだよ」



私が呼び掛けてやっと、ロイは安心したように私のいる方向へ首を向けた。





「話の内容はソラにお任せするよ」



「わかった。

―――じゃあ今日は、私の友達の話をしようかな…」





私の話す、くだらない他愛もない話。


いつだってロイは楽しそうに聞いてくれる。




クッキーを二人で食べながら、過ぎ行く幸せな時間。



時が止まればいいのに…。


叶わぬ想いは空を彷徨う。
< 8 / 77 >

この作品をシェア

pagetop