It's so hopeless
ロイは私の顔を見たことがないし、私もロイの包帯の下の瞳を見たことがない。
ロイの身体には白い包帯が至るところに巻いてある。
見たところ腕…、首…、鼻から目にかけて。
痛々しく、儚く、切ない。
それが初めてロイに出会い、感じたことだった。
一度だけ、ロイに包帯を巻く理由を聞いたことがある。
『怖い』
ただそれだけ。
ロイはそれだけ言うと、悲しげに空を見上げた。
あの時の澄んだ碧空…。
ロイに見えるわけもない景色。
ロイの思い浮かべる空はどんな空だろう…。
あの時以来、そのことについて私が触れることはなかった。
「ロイ、今日は何の話をしようか?」
私の声にロイは健気に声の出所を探す。
「ロイ、私はここだよ」
私が呼び掛けてやっと、ロイは安心したように私のいる方向へ首を向けた。
「話の内容はソラにお任せするよ」
「わかった。
―――じゃあ今日は、私の友達の話をしようかな…」
私の話す、くだらない他愛もない話。
いつだってロイは楽しそうに聞いてくれる。
クッキーを二人で食べながら、過ぎ行く幸せな時間。
時が止まればいいのに…。
叶わぬ想いは空を彷徨う。