溺愛なんて聞いてない!
いつの間にか歓迎会の時刻となり、歓迎される主役であろうイケメン君が前で挨拶をしているようだ。
女子の黄色い声に邪魔されて末席までは全く聞こえてこないが。
そのまま営業部長の乾杯の声が上がり、やれやれとビールに手を伸ばそうとすると、ほら、と佐々木がコップにビールを注いでくれていた。
素早いな。
「ありがと」
佐々木の手からビール瓶を受け取って代わりにビールを入れてやった。
泡だらけになったけど、許してもらおう。
「ごめん、下手だね」
「ククッ、いいさ」
じゃ、お疲れ。
とグラスを合わせて喉を潤す。
9月と言ってもまだまだ暑い熱帯夜のような今日。
店のなかとはいえこれだけ人が集まると室温も上がって喉が乾く。
勢いに任せてゴクゴクと一気に飲み干してしまった。
「大丈夫かよ」
「うん、喉乾いてたから。今から食べる」