溺愛なんて聞いてない!

いつの間にか歓迎会の時刻となり、歓迎される主役であろうイケメン君が前で挨拶をしているようだ。

女子の黄色い声に邪魔されて末席までは全く聞こえてこないが。
そのまま営業部長の乾杯の声が上がり、やれやれとビールに手を伸ばそうとすると、ほら、と佐々木がコップにビールを注いでくれていた。


素早いな。


「ありがと」

佐々木の手からビール瓶を受け取って代わりにビールを入れてやった。

泡だらけになったけど、許してもらおう。


「ごめん、下手だね」

「ククッ、いいさ」

じゃ、お疲れ。
とグラスを合わせて喉を潤す。

9月と言ってもまだまだ暑い熱帯夜のような今日。
店のなかとはいえこれだけ人が集まると室温も上がって喉が乾く。

勢いに任せてゴクゴクと一気に飲み干してしまった。


「大丈夫かよ」

「うん、喉乾いてたから。今から食べる」



< 10 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop