溺愛なんて聞いてない!
「どうした?」
「いや、何かテンションが上がらなくて」
「珍しいな。……なぁ、二ノ宮はイケメン王子の陣取り合戦行かなくていいの?」
「嫌だよ、怖いよあそこ」
遠目ながらも茉奈ちゃんは隣をキープしているようだ。
囲まれてて頭しか見えないが。
「どんだけイケメン君なのよ」
「あれ?王子のこと知らなかった?」
「私さ、夏期休暇取れなかったから昨日までお休みしてたんだよね」
「そういや休んでたな」
「そうなの。だからイケメン君は週明けでいいよ。動きたくないし」
「そっか。まぁ飲め飲め」
何故かご機嫌そうにお酌してくる佐々木。
「でもさ、佐々木からしたらライバル登場だね。どう?イケメン枠が増えちゃって内心苛々?」
「アホか。でもなーあのイケメン王子は別格だぞ。あんな男芸能界でもそういないんじゃね?」
「そんなに?うわっ、ちょっと見てこようかな酒のつまみになりそう?」
「王子の元まで辿り着ければな」
……チラリ。
どうみても、上座に座るお姉様方の囲いを振りきれる気が全くしない。
さながら城を守る城壁のようだ。
茉奈ちゃんは大丈夫だろうか。
「諦める。でもさ、佐々木の口から王子って。それって女の子が呼ぶ敬称じゃないの?」
ケラケラと思わず笑いながら伝えてみると、酔いも一気に覚める一言が。
「名前なんだよ王子って」
「……そりゃ大層な名前だね」
ここまで聞いても、私は気付かなかった。
「正式には『北王子』だ北王子煌。俺らと同い年だぞ」
「……………………は?」
北王子 煌(きたおうじ こう)???
「名は体を表す。ってなもんだ」
「……………………」
「まぁ今日はゆっくり飲もうぜ」
「……………………」
「あれ?二ノ宮?どうした?」