溺愛なんて聞いてない!
馴れた手付きでキッチンに立ち、グツグツと沸かしたお湯に二人分より少し多目にパスタをゆでる。
今日はトマトクリームパスタ。
簡単にシーフードMIXとベーコンを炒めてトマト缶で煮込む。
仕上げに生クリームとモッツァレラチーズと混ぜ合わせて出来上がり。
後はサラダとスープ。
私はそれだけでもいいんだけど、白いご飯がすきな煌はどんなものにも白米を付ける。
ってか、パスタにご飯て……。
10年経とうが体に染み付いた煌の好きなもの。煌の食べ方。
忘れるはずなんて無い事が嫌になる。
ガチャリと鍵が開く音がして、予定通りの時間に煌が帰ってきた。
「おかえり」
「ん、ただいま」
軽く視線を交わして着替えに寝室に向かう煌。挨拶をするように躾たのも小学生時代の私の賜で。
誰もいない家に帰るのだからと挨拶をする習慣がなかったらしい。
中学年の頃から帰る家は煌の家になった私はコンコンと言い続け、時にはご飯をあげないと脅して挨拶の大切さを伝えたものだ。
「お前さ、弁当にピーマン入れんなよ」
帰る早々出るお小言に苦笑いして、出来上がったパスタを食卓に乗せると「うまそ、」なんて呟くのが聞こえて現金にも胸が熱くなる。
「いい大人がピーマン1つで文句言わないでよ。嫌なら作らないからね」
席につきながら煌を懲らしめる唯一の食事を盾にして黙らせる。
煌は潔癖なところがあり、食事に関しては知らない人の手作りは食べられない。母親である雛ママと私。後は私の母親の作ったものだけしか“手作り”は受け付けないのだ。
ただ、対価を払って受けとる外食は別らしくそれは普通に食べる。
私からしたら意味わからん、なのだが私のいなかった10年は殆ど外食だったそうだ。