溺愛なんて聞いてない!
「二ノ宮、社食行かね?」
「あっ、今日五目玉子焼きあるよ」
「おっ、ラッキー」
「はいはい」
二人ならんで社食に移動する。
営業で出入りの激しい佐々木はたまに社内でお昼をとるときこうして誘いに来る。
私のお弁当が目当てなのだ。
昔、たまたまあげた五目玉子焼きを大絶賛してそのままお弁当を食べられた。
まぁ佐々木の日替り定食貰ったから良いけど。
それ以来、こうして時間が合うと私のお弁当と佐々木の社食と交換する。
頻繁でないからこちらもたまに社食が食べれてラッキーだ。
「おっ、今日の日替り唐揚げ定食だって。良かったな、それがいいだろ?」
「やった!」
「席、取っとけよ」
「うん」
混み合う社食でも二人分の席の確保はそう難しくない。
適当に空いている席につき、持参した水筒をとお弁当を取り出して佐々木を待つ。
お待たせ、と唐揚げ定食の乗ったトレーを私の前に置き向かい合う形で座る佐々木に
私用の小さなお弁当箱を差し出せば嬉しそうに笑うから私も釣られて笑顔になってしまう。
だって、私にとって料理は唯一自慢できるもの。煌に褒められる只一つの優越感。
初めて煌以外に食べてもらったけど、喜んでもらえるならそれは自信になるんだ。
「いつもご馳走さまです」
冗談目かして頭を下げると、いやいやこちらこそ弁当すみません。と返される。
安上がりな社食といえど、私の作った弁当と交換だなんて悪いとは思うが、ワンコインの日替りだからと押しきられてありがたく頂くことにした。