溺愛なんて聞いてない!
「なぁなぁ、それお前が作ってんの?」
同級で同じ営業部ということもあってか、二人でツルむ姿をよく見かけるようになった煌と佐々木。
イケメン同士の語らう姿は腐った乙女のイケない妄想をフル回転に掻き立てて、新たなファンクラブが発足したとかしないとか。
だったら、佐々木の隣に座んなよ!
なんて苛つきながらも口を閉ざすしかないこの状況。
思わず声に出さないうちに退散せねば!
「あぁ?……これ?」
そう箸で弁当を指す煌に「煌!指し箸駄目!!」なんて思わず叫びそうになるのを寸でのところで堪えた。
あっぶなっ!!!
「そうそう、すげぇ旨そう。何、彼女?」
「うん、そう」
はぁぁぁぁぁぁぁ!?????
「俺さー玉子焼き好きなんだよね。あれ?その玉子焼き、二ノ宮のと似てんね。あっ、二ノ宮ご馳走さま。今日も旨かった」
「あ、あぁ。うん私もありがとう」
隣から冷たい視線を感じつつも気付かないふり。
「何?い…………二ノ宮さんに弁当作ってもらってんの?」
呼ばないでよ!
一花、なんて絶対呼ばないでよっ!!!
「うんにゃ、違う違う。前にさ玉子焼き貰ったらすげぇ旨くて。で、他のも旨かったわけさ。たまに会社で昼をゆっくり取れるときだけ社食奢る代わりに二ノ宮の弁当貰ってんだ」
「へぇ……」
「…………」