溺愛なんて聞いてない!
「そのさ、王子の弁当に入ってる玉子焼きみたいなやつ。あれが二ノ宮のめちゃ旨なんだって」
「これ?」
「そう」
「へぇ、二ノ宮さん凄いね。羨ましいな、僕の彼女にも教えてあげて欲しいよ」
にっこり笑う煌の目の奥が何故か不機嫌だ。
私が何したって言うのよ!
「なんで?それもすげぇ旨そうじゃん……何か二ノ宮の弁当とおかずが似てんね」
良かったー煌のお弁当の方が大きいからおかずが増やしといて。
良かったよー。
セーフ!
「まぁね、長い付き合いだから僕の好みも知ってくれてるしね。だから僕には旨いけど、一般的にはどうかな」
どうかなって、何よっ!!
声に出せない文句を必死に飲み込んで、煌と佐々木の会話を聞き流すふりをする。
「そんな事ないんじゃね?旨そうじゃん」
「いやいや、二ノ宮さんみたいに誰かに食べさしたり出来ないよ。申し訳なくて」
煩いな!
なんて、知らん顔しながらも苛々が降り積もって。
「おいおい、作って貰っといて何言ってんだよ」
「昔、自惚れないでねって言った筈なのに」
自惚れてなんてないわよ!
そんな事、言われなくても分かってる!!
挑発するような煌の台詞にそろそろ我慢も限界だった。
「は?何言ってんの?」
「お金取るとかありえない」
「お金なんて取ってないわよーーー!」
プチっと何かがキレて思わず声が飛び出してしまった。