溺愛なんて聞いてない!
「へ?二ノ宮?」
「何勘違いしてんの?」
「定食と交換してるだけじゃない!」
既にはっきり声に出していることに気付けなくて、売り言葉に買い言葉。
思いっきり肯定してしまっていた。
「は?」
困惑する佐々木に、ヒートアップしていく私。
「交換するほど価値があると思ってんの?」
「そ、そんな……そんな事思ってない……」
久しぶりに聞く私を否定する台詞。
10年のブランクはあっという間に私を貶める。
「………………」
もはや佐々木が言葉を無くしていることにすら気付かなくて。
「じゃあ佐々木、そう言うことだから」
煌の台詞で我に反った。
「っ、!!!!!!」
「…………二ノ宮が彼女?」
佐々木の困惑が伝わって。
「佐々木、弁当悪かったね粗末なものを食べさせて。これからは一花の弁当は諦めて」
それでも続く煌の辛辣な暴言。
「…………………………」
気付いたときにはどうやっても取り繕う事も出来なかった。
「二ノ宮、本当に?」
本当じゃない!
「自爆したの一花だからな。じゃ、俺行くわ。あ、これ持って帰っといて。夕飯はいらないから。
……無防備に手料理とか本当なに考えてんの?一花、俺以外の奴に食べさすとかありえないから」
煌の台詞は私との関係を否定できる術をもたなくて。
心に刺さった傷に、佐々木の誤解。
だから、私は煌の最後の台詞の意味に気付かなかった。