溺愛なんて聞いてない!

※ ※ ※

「「お疲れ」」

会社と駅のちょうど中心くらい。こじんまりとした洋風居酒屋の『f』は私と佐々木がよく新人の頃からお世話になっている所で。通りから一本中に入っているため隠れ家のようにひっそりと店を構えている。

カチンとグラスを合わせて、一気に飲み干した。

飲まなきゃやってられないっての!


「で?何がどうしてそうなった?」
佐々木が躊躇なく本題を突っ込んだ。

それ、私が聞きたいよ。


「うーん。とりあえず私は彼女じゃなくて家政婦で。同棲じゃなくて同居でございます。住み込み家政婦ね」

はぁ?っと佐々木が目を丸くする。

「煌は幼馴染みなの」

「幼馴染み?」

「そう。産まれたときから一緒で母親同士も仲が良くてね。で、お互いの両親が共働きで忙しかったから私が煌のお世話をするようになっちゃって。今もそれが続いてるだけよ」

空になったグラスを通りかかった店員を呼び止めおかわりを注文する。
佐々木はまだ半分以上残っていた。

まぁ、後からでいいか。


「だからってなんで住み込み?」

ですよね。

「家事が全く出来ないから雛ママから……煌のお母さんね。で、そのお母さんから頼まれちゃったのよ」

「だからって……」

「うん、そうなんだよね……だけど小さいときからの癖って中々直らないでしょ?そんな感じで結局見捨てられないのよね」

私がどんな思いで逃げたのかなんて……煌は考えもしないんだろうな。

何だかんだと放っておけないのも……やっぱりまだ好きだから、なんだろうか。
又同じ事の繰り返しだ。

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