溺愛なんて聞いてない!


ぐいっと残りのビールを煽った佐々木が眉間に皺を寄せて何かを考え込んでいる。


「どうしたの?」

「……あのさ、部屋ってどうなってんの?」

部屋?

「別々だけど?」

「……風呂とかは?」

お風呂?

「お風呂はさすがに2つないでしょー。普通の
マンションだよ?」

「……お前さ、危機感無さすぎじゃね?」

「危機感?」

「あのさ、昔から知ってるにしても今はもうガキじゃねぇんぞ?大人の男とそんな簡単に住むとか何考えてんだよ」


すみません、生ひとつ。なんて通りかかった店員に声を掛けて少しずつ佐々木の声がさて、不機嫌になっていく。


「だいたいさ、お前が面倒見る必要なんて全く無いんだろ?幼馴染みったって、身内でもなければ………………元カレとか?」
ブッ!と思わずビールを吹き出してしまった。

「ご、ごめんっ」

おしぼりで回りを拭きながら、何故か真剣な目をして凝視してくる佐々木に慌てて言葉を返した。

「そ、そんなわけないじゃない!……煌は私なんてそんな対象に見たこと無いわよ」

「わかんねーじゃねぇかそんなの」

「家政婦よ、家政婦!煌にとって私なんてただのパシリよ」

「っ、……お前それマジで言ってる?」

何なんだ、いったい。
不機嫌な上に呆れた声を出す佐々木の言いたいことが分からない。

首をかしげながら、とりあえず「何の事?」と返しておいた。

だって、何が聞きたいのか分からない。


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