溺愛なんて聞いてない!

でもな、今日はご飯も要らなかったわけだし何しに来るんだろう。

そう思って手元の梅酒に目を向ける。

飲んじゃ駄目って言われたよね。
でもさ、何で駄目?
何で煌の言うことを聞かなきゃいけないの?

そもそも煌に怒られる理由が分からない。
もう私だっていい大人だ。
なんてったってもう28歳。

お酒の席も何度も経験してきたし、それで失敗したことも無い。

ここは毅然とした態度で煌に示してもいいんじゃないだろうか。

飲んだって大丈夫なんだと分かってもらういい機会じゃないか?


「…………ねぇ、佐々木?私飲むよ!これ、飲んでみる!」

「お?おぉ飲めばいいんじゃね?それ頼んだのお前だろ?」

「そうだよね!いいよね!」


訳の分からないテンションでまずはチビりと梅酒に口をつける。

あ……甘い。

ビールに比べて纏う酒の臭いを隠すように口に残る甘さが喉に流れて、後からくるアルコールの強さにふわりと目が眩む。

でもそれは一瞬で。

「美味しい!」

思わず声に出した。
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