溺愛なんて聞いてない!
昔の事は忘れたい!(1)
少し話したように、私たちは気付いたら一緒にいるのが当たり前だった。
対等だった筈の関係がいつの間にか主従関係に変わっていったのはいつだったのか。
いつからそうなったのかなんてさっぱり分からないけれど、あの時にはもう私は煌に従順な僕のような扱いを受けていたんだった。
「一花ちゃん」「煌ちゃん」お互いをそう呼びあい、朝から手を繋いで一緒に幼稚園へ通う。
幼稚園のなかでも一緒に遊んで、帰りも一緒に手を繋いで煌ちゃんの家に帰る。
共働きだった我が家には帰ってからも誰もいなかったからだ。
その点煌の家も共働きではあったが、在宅で仕事ができる小説家という職業だった雛ママに私はいつもお世話になっていた。
自動車メーカーの工場勤務の父親に看護士だった母。
夜勤が重なるときもあったが、私は平気だった。だって大好きな煌ちゃんのお家にお泊まりが出来るから。
忙しい両親に代わって必然的に上達する家事スキル。
その腕がお世話になったお返しでもないけれど、家事全般が苦手だった雛ママに喜んで貰えることが単純に嬉しかった。
煌にも喜んで貰えたんだもの。