溺愛なんて聞いてない!


※ ※ ※



大手ハウスメーカーの営業事務をしている私は担当営業ががっつりお盆に仕事を入れられて泣く泣くお盆休みを返上して仕事に励んだ代わりに、9月の一日からお盆休みとして休暇をもらっていた。

そんな休暇明けの9月を数日過ぎた、ある週末の歓迎会に事件は起こった。


「一花先輩!今日の歓迎会凄いですよ!」

「へ?何で?」

「一花先輩、夏休み取れなかったからって一日からお休みしてたじゃないですか!すっごいイケメン営業さんが異動してきたんですよ!!今日は朝から直行だったみたいで、先輩会えなくて残念でしたね」


はぁ~初めて見ましたあんなイケメン。
何て言うか、綺麗なんですよ!男の人なのに!王子さまって本当にいるんですね~。


なんてうっとりしながら入念に化粧直しを始める後輩の茉奈ちゃん。

へぇ、そうなんだ。

話ながらもその精密さに感心しながら、身だしなみとしてあぶらとり紙で顔の皮脂だけでも拭き取る私に可愛い後輩は呆れ顔だ。


「先輩!お化粧しましょうよ!今日は戦いですよ!陣取り合戦ですよ!気合い入れてください!」

「な、なんで……??」

「総務のお姉様方がもれなく来られるそうなんです!チッ、何で営業部の歓迎会に来るんですかね!?王子は営業部のものです!」


平均的な女子の身長を持ち、栗色の髪を綺麗にカールさせて。寸分の乱れもなく入ったアイラインに爪楊枝が乗りそうなほど上がった睫毛はエクステだそうだ。

理想的な体つきと理想的なおっぱい。
フリルのついたシャツにフレアなスカートとと、武器をふんだんに使っていながらも(胸元を強調していても)その清楚に見えるように計算され尽くしたメイクと、厭らしく見えないギリギリの丈を守るその装いは、肉食獣の気配を完全に消していて。

天晴れ、と感心してしまう。
2期下にあたる胡桃沢 茉奈ちゃん。(くるみざわまな)ちゃんは、自分の欲望に忠実な可愛い後輩だ。

ちなみに、合コンの勝率は9割だそうだ。

よく分かんないけど。


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