溺愛なんて聞いてない!
「なぁなぁ、二ノ宮のさ、その眼鏡がダメなんじゃね?」
「おばちゃん眼鏡だよなー」
「お前さ、ちょっと外してみろよ。俺らが判断してやるからさ」
うひゃひゃひゃひゃ。
そう言った彼らの台詞に思わず顔をあげてしまった。私の眼鏡に手を伸ばしてきた彼らから逃げるように眼鏡を守る私。
だって、だって、煌に怒られる!
「いやだ!止めて!」
「えーいいじゃんよー」
「止めてったら、」
「えー減るもんじゃないのにいいじゃん」
減るっ!主に私のHPが!
やんややんやと騒ぎは増し、私はとにかく先生が来ることを祈った。
俯いて、耳を塞ぎ、周りを遮断して自分を守っていた。
ふと違和感を感じた。
気付いたらあれだけ騒がしかった教室内が静まり返っている。
その時に聞こえた声。
誰もが息を飲む。
「何してるの?」
私には聞き慣れた、煌の不機嫌な声。
だけど学校でそんな煌を見せたことが無くて、クラスの皆に緊張が走る。
「っ、…………」
視線が私を囲む彼らに向けられて、再び煌が問いかけた。
「ね、何してんのって聞いてるんだけど」
声を荒げるわけでもなく静かに抑えた声を出す煌に彼らがびびっていた。
それでも、そんな自分を認めたくないのと少なからずクラスの人気者としての立場を自覚していた彼らは煌に反論する。
俺らはお前なんか怖くないんだからな!なんて強がりが彼らの背後から聞こえてきそうだ。
今ならそれが鮮明に分かる。