溺愛なんて聞いてない!
「何?何してたか言えないの?」
煌が、フッと煽るように鼻で笑い目を細めた。
「はぁ!?」
「ちょっと二ノ宮の眼鏡を取ろうとしてただけだろ?」
「お前に関係ねぇよ!」
ピクリと煌の眉が振れる。
あっ、ヤバイ。
煌の機嫌メーターが下がっていく。
既に私の意識は恥ずかしかった事よりも、眼鏡を取ろうとされた事よりも、煌の機嫌の悪さにハラハラしていった。
「……一花の眼鏡、ねぇ。……なんで?」
視線を反らすことすら許されていないような煌の迫力に目の前の彼らは一歩後ろに後ずさり、でも踏ん張って答える。
「昨日こいつネギ持ってたんだよ」
「な、だからおばちゃんみたいでさ、」
「そうそう、おばちゃん眼鏡かけてるから外して確かめてやろうとしただけだよっ、」
確かに、私のかけている眼鏡はレンズの幅が広くて逆三角形のような大きさだ。
今どきの台形のような細いレンズではない。
顔の半分が眼鏡で埋まっているからだ。
でもこれだって、煌がこれにしろって言ったから。
『これなら不細工な顔がバレないぞ』って。
………………ちょっと待て。
小さいときの私。
何普通に納得してたんだ。
自分の従順すぎる振る舞いに涙が出そうだ。