溺愛なんて聞いてない!
1学年7クラスもあるこの中学校でこの2年間運良く煌と離れることが出来た。教室で数少ない小学校からの友人と平穏な時間を過ごす。その中に私を「おばちゃん」と罵った一人がいた。

立花 海人君だ。
ちなみに他の二人は忘れてしまった。


私の中であの事件は煌の暴君ぶりで上書きされてしまっていて、彼らの事は全くといっていいほど思い出すことは無くなっていた。

だから今、こうやって談笑出来る仲になれたとき彼から謝られても何の事だか分からなかったのだ。

「あのさ、あの時は悪かったな」

「…………どの時でしょうか?」

「はぁ?あれだよ、あれ!3年の時!北王子のやつだって!」

「煌?」

「…………二ノ宮のネギ事件だよ」

「ああ!」

「忘れてたのかよ!」

「いやー……ごめん?」

「まぁいいけど……悪かったな」

「いや、こっちこそ忘れててごめん。もう気にしないで?」

「っ、」

2年生になって1ヶ月。席替えなるものをして隣になったのが立花君だった。
小学生時代そこまで仲が良かったわけではないが同小の気安さは残っていて、これまた同小の友人、押切 みなみちゃん(おしきり)と共に話すことが増えた。

ちなみに、みなみちゃんとは今でも連絡を取り合っている為、煌との同居も知っている。


学校に居る間中感じる剣呑な視線。
みなみちゃんと立花君との時間が何よりも心落ち着く時間だった。


< 49 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop