溺愛なんて聞いてない!


「あぁ、だから今日は店が大きいんだね」

今更ながら営業部でよく使うお店ではなかったことにスッキリした。
うん、納得。

「せんぱーい、一回お化粧させて下さいよーコンタクトにして見てみたいです!眼鏡でも可愛らしい顔付きしてるんですから、フルメイク、してみたいです!」


おしゃれやメイクが大好きな茉奈ちゃんは事あるごとに私を弄りたがる。

そう言われると思い出すこの台詞。
何年たっても忘れられない呪いのようなこの台詞。


『ぶっ細工が、化粧したところで変わんねぇんだから化粧品代の無駄だな』


だから私は日焼け止め程度のファンデと化粧をした風に見せるささやかなチークを塗って、眉毛を描く。

所要時間5分~10分で私のメイクは終わる。

そろそろ肌の張りを悩むお年頃となった私、二ノ宮一花(にのみやいちか)28歳。

彼氏無し、イコール年齢。


少し長めの前髪に、煌に言われてから外せなくなった眼鏡を常に掛け続け、肩下あたりの髪を一つでひっつめただけ。

これまた学生時代を煌から散々言われた残念なナイナイ尽くしの体型は、大人になった今でも成長の兆しを見せることはなく、マニアな男性を探すのも面倒臭いと寂しい老後を覚悟して貯金に精を出し、いつか庭付きの自分の城を持つために日々頑張っています。

お庭で家庭菜園したいんだよねー。
ハーブとか。
季節のお野菜とか。


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