溺愛なんて聞いてない!


「後、クリーニング出してたシャツそっちに行ってるかもしれないからあったら部屋に戻しといて」


「へ?シャツ?……薄い水色?……あれ煌のだっけ?」


緊迫した空気から、穏やかにいつもの会話を投げ掛けられて思わず“煌”と呼んでしまった。

あ、と気づいた瞬間思わず先輩を見てしまうと、同じように私に視線を向けた敵意むき出しの先輩と目があった。
うわぁ……私死ぬかも。


「そう、やっぱりそっちにあった?」


「…………え?あ、あぁ。ち、父のとこにあったかも。見直してみる」


「うん、宜しく。……で、先輩?いつまでここにいるんですか?」


そう言って冷笑を浮かべた煌。

今ここにある空気を読むなんてしようともしないまま先輩を奈落の底まで落とし込んだ。
羞恥と怒りで震える先輩はさっきの甘い声はどこえやら「最っ低!!」と言って帰っていった。





「うざ、」


ポツリと呟いた言葉を拾ったのは、きっとここで成り行きを見守るしかなかった立花君とみなみちゃん、そして私という煌の本性を知っているであろう同じ小学校メンバーだけで。



「じゃぁ、一花。頼んだよ」



と、爽やかに帰っていった。
…………この困惑した空気を残したままに。



煌のバカーーーーー!!!








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