溺愛なんて聞いてない!
「えーいいよ。どうせ変わんないし。それにライバルが増えない方がいいでしょ?」
そう笑いを取ろうと冗談混じりに答えてみると、
「先輩。どこレベルまでいくつもりなんですか」
なんて真面目に返された。
「はい、ごめんなさい」
ですよね。
私なりに最低限の身だしなみを直して、戦闘モードに入った茉奈ちゃんと歓迎会である鶏福(とりふく)へ入る。
読んで字のごとく鶏屋さんだ。
手羽先がおいしいんだよねー。
「茉奈ちゃん、私この辺で食べてるから頑張っておいでー」
ひらひらと手を振り末席に位置取る。
「えー先輩一緒に行ってくださいよ!」
「え、やだ。総務とバトル根性無いし。興味もない」
「もうっ!枯れすぎですよ!」
「まぁまぁ。ほら、イケメン君は主役なんだから上座でしょ。早く場所取りしておいで」
そう言うと、ハッとして鼻息荒く上座に向かう茉奈ちゃん。
自分では枯れてるつもりも無いんだけどな。
蘇る煌の台詞。
『お前が相手にされるわけねぇだろ。ちゃんと身の程を知れよ』
大丈夫。
ちゃんと自覚してるよ、煌。
煌から離れて10年。
私はいまだに煌の言葉に縛られてる。