溺愛なんて聞いてない！

キスマークなんて聞いてない！

今日は朝から視線を感じる━━━━━。


何となく顔見知りの人たちにあからさまに２度見されたり、何かを言いたそうにして言葉を詰まらせては去っていったり。


え……何？
はっ！！！！眉毛書き忘れてたとか？
やばいやばい！！！！



手鏡なんて持ち歩かないし持ってもいない。これは早急にトイレで確認せねば！


「おはよーございます」


挨拶を済ませてデスクに鞄を置く。
中からお化粧ポーチを取り出して、トイレへ踵を返す。

眉毛も、全くない訳じゃないけれどさすがに社会人としては恥ずかしい。


前髪もあるし、そんなに目立つ訳じゃないけどね。
一応ね、
身だしなみよね。


何となく、心のなかで釈明して。
誰にたいしての釈明なんだかと苦笑する。



「あ、先輩。おはようございます！」



茉奈ちゃんの声に顔をあげ、「おはよう」と声を返す。
あっ。


「ね、茉奈ちゃん。私さ眉毛ある？」

「え？眉毛ですか？……描いてありますよ？」

「へ？ほんと？」

「朝の事忘れちゃうなんてやばいですよ？老化ですか！？………………って、せ、せせせせせせ先輩！？」


相変わらず失礼な後輩だ。
しかし、そのあとの吃り具合に首をかしげると、ぐいっとシャツを引っ張られて襟足を覗き込むように首を絞められた。