溺愛なんて聞いてない!
「お疲れー早いじゃん」
「まぁな、月頭くらい早く終わらせるさ」
「あぁ、まぁそうね」
気の無い返事で答えながら、目の前に並ぶ料理に視線を移す。
お腹すいたなー。
食べちゃ駄目かな。
1つくらいバレないよね。
どれにしよっかなぁー。
「二ノ宮、ほら」
佐々木に呼ばれて振り向くと口に向けられた大きな塊が。無意識に口を開け、その塊をほうばった。
むぐむぐと咀嚼して、それが唐揚げだと気付く。
「それで我慢しとけ、もう少しだから」
唐揚げが大きすぎて飲み込めないまま頭を上下に動かして了解の意を示す。
「ククッ、餌付けしてるみてえ」
失礼な!
何がそんなに楽しいのか、嬉しそうに笑う佐々木を不思議に思いながらまだ口から無くならない唐揚げをモックモックと咀嚼する。あぁ、美味しい。
そんなやりとりの最中にも徐々に人は集まり、営業部の面々と綺麗に着飾った気合いバッチリの総務のお姉様方も会場入りをしていた。
口を動かしながらとりあえず頭を下げて挨拶を交わす。
唐揚げ、無くなんない……。
それをみて、笑い続ける佐々木を一睨みすると、上座に近い襖が開いて黄色い声が飛んだ。
おお、イケメンの登場か。