俺、兄貴になりました④
「兄貴っ、俺らホントにテストないんだってっ…あたたっ!」
「そうそう!俺ら芸能科だからっ…いててっ…レポートだけなんだってっ」
ん?
芸能科?
「あぁ、そういやそんなこと言ってたな」
「酷いっ!俺ら悪くないのに」
「痛い思いしただけじゃんっ」
悪い悪い、と頭をぐしゃぐしゃと撫でれば、双子は「全くもう」と俺に乱された髪を整えた。
「えぇーーっ!!恋にぃと蒼にぃテストないの!?」
「なにそれ、ずるいっ!!交換してよ!!」
会話を聞いていたガキ共が口々に文句を言いはじめる。
「うるせぇガキ共っ、早くやれ!」
「「いいだろ〜」」
「お前らも煽ってんじゃねぇよ!!」
全く、こいつらは…。
勉強も静かにできねぇのか。
…仕方ねぇな。
「良い点取ったら褒美やる」
「「え!?褒美!?」」
こいつらは餌がねぇと何もやる気ださねぇからな。
「好きなもの買ってやる。だから勉強しろ」
そう言った瞬間、ガキ共の目がキラキラと輝いた。
「マジ!?じゃあ俺最新のゲーム機!!」
「俺スパイク欲しい!野球の!」
「俺は…新しい掃除機が欲しいなー。今の古くてちょっと使いづらいんだ」
「翠にぃ…考えがもう主婦だよ…しかもそれ褒美っていうの?」
陽くん、ごもっともだ。
掃除機なんて俺が普通に買ってやるぞ、翠…。
「「俺たちビーフシチュー1年分」」
「絶対やだ!飽きる!」
「にぃ達だけで食べてよね!?」
どんだけ好きなんだ、ビーフシチュー。
俺もさすがに1年分は嫌だぞ…。
「えー、こいつらだけズルイ」
「兄貴、俺たちにもなんか買ってよ」
テストがないアイドルの双子がブーブーと隣で文句を言う。
このままだと永遠に文句言われ続けそうだな。