俺、兄貴になりました④
「久遠さん!これ受け取ってくださいっ」
「久遠さん、私のも!」
仕事場に着いた瞬間、女性社員が俺を囲む。
綺麗にラッピングされた包みを俺に向かってグイグイと差し出して来る。
…箱の角が当たって地味に痛ぇんだけど。
俺がそんなことを思ってるなんて、彼女達は考えていないだろう。
俺に好意を寄せてくれる女性達は、みんな俺が「優しい」とか「紳士」とか色々言うけど。
俺、ぶっちゃけそんないい人じゃないし。
今も心の中で「香水臭くて無理。早くどいて」なんて思ってる。
「申し訳ないんだけど、チョコは受け取れない」
すっぱりとそう言えば、彼女達からは「どうして!?」の質問責めに合う。
あーもう、しつけぇな。
「俺、本気で好きな子からしか受け取りたくないんですよ。その子しか眼中にないので」
にっこりと満面な笑みで言ってやった。
だって本当の事だから。
今のセリフを簡潔に訳せば、「お前らなんてこれっぽっちも興味ない」って事なんだけど。