俺、兄貴になりました④
「え〜?せっかく作ったのにぃ。私のチョコ、欲しがる人はたくさんいるんですよぉ?」
そう言ってチラッと俺を見てくる彼女。
だから何。
だったらそいつらに渡せよ。
「私があげるって言ってるのよ?」的な目で見てくるな。
「そうなんですか。甘いものが苦手な俺には理解し難いですけどね」
イライラが抑えられなくなってきたから、少しくらい言い返してもいいかと満面な笑みで言ってやった。
要約すると「アンタのチョコを欲しがるなんて理解出来ない」って意味だけど。
俺の言葉に、流石に少し言葉が詰まった彼女は、話題を変えてきた。
「あ…そ、そうそう、久遠さんこのアクセサリー知ってますかぁ?」
彼女が見せてきたのは、あいつがデザインしたアクセサリー。
あいつ……凛はデザインするとき、必ず俺がデザインした衣装に合わせて作成する。
『私が作った作品で、ほんの少しでも翔ちゃんの衣装を引き立てることが出来たら、私はそれでいい。
私はそれだけで幸せなの』
そう言って俺に幸せそうに微笑んだ凛を、俺は今も鮮明に覚えてる。