俺、兄貴になりました④
「ストーカーみたいで、気持ち悪…」
「黙れよ」
彼女の言葉に被さるように言った俺の低い声に、彼女の目が大きく見開いたのが分かる。
そりゃそうだ。
俺ほとんど怒んねぇし。
一応、普段は優しい兄貴でいるからな。
だけど。
「ストーカーみたいでウザくて気持ち悪りぃのはお前だろ」
心底惚れてる女の悪口を言われて黙ってられるほど、俺は大人じゃねぇんだよ。
「く、久遠さ…ん?」
「自惚れるのもいい加減にしろよ。
俺はアンタを可愛いだなんて思ったことはカケラもない。
その喋り方も臭くてキツイ香水も何もかもが嫌いだ。
本当は近づきたくすらない」
俺は口を挟む隙も与えずに言い放った。
あまりの俺の急変した態度にただ呆然としている彼女を置いて部屋を出る。
俺にかかれば、このまま彼女を芸能界から追放することは容易い。
でも、それを凛が知ったら絶対怒るから辞めておく。
俺は凛に嫌われたいわけじゃねぇから。