俺、兄貴になりました④
「翔ちゃん?」
「あー、急に悪いな。元気してるかなぁって思って」
本当は違うけど、「声が聞きたくなった」なんて言えるわけない。
『…翔ちゃん、何かあったでしょ?』
「え…なんで?」
『声のトーンがいつもと違うし…。なんか元気ない』
っ…。
なんで分かるんだよ、コイツは。
「なんでもねぇよ」
『嘘だっ!絶対何かあったよっ』
「ははっ、何もねぇって」
お前の声聞いて、本当に何もかも吹き飛んだんだよ。
「元気そうでよかったわ。じゃあな」
『あ、ちょっ…ちょっと待って!』
通話を切ろうとした俺を、凛が慌てて引き留める。
「なに?」
『あー…その…えと……』
「なんだよ?切っちまうぞ〜」
『やっ!ま、待ってっ』
なんか用があったのか?
そのまま凛の言葉を待っていると。
『チョコ送っておいたから!残したら許さないからねっ。
〜〜〜っ、し、翔ちゃん大好きっ!またね!』
なんていう言葉を残して一方的に通話を切られた。
言い逃げとか、ズルくね!?
つか…。
「可愛すぎんだろ…っ」
恥ずかしがり屋な恋人からの、可愛すぎる告白。
いつもより素直な気持ちを聞けるバレンタインって、やっぱ最高。
なんて柄にもないことを思った、なんだかんだで幸せな1日。
side 翔輝 おわり。