【短】もしもあなたが死んでしまうなら。
(...最後?)
「...違うよ、最後じゃないよ、彼は、武は、眠っているだけだもの。
最後だなんて、言わないで。
また明日になったら、おはようって言ってくれる。
日和、って呼んでくれ」バチン!!!!!!
___一瞬、なにが起こったのか、わからなかった。
バチンと響いた音だけが、先に耳に伝わり、
そのあと、頬からくるジンジンとした痛みに、
(ああ、いま、私はビンタをされたのか。)
そう気づいた。
するとその行為に驚いた彼のお母さんが彼の妹を制するように叫んだ。
「花梨(かりん)!!!
あなたなんてことを...」
「お母さんは黙ってて!!!!!」
そういい、彼女は彼の母の言葉をさえぎり、ビンタした手で、私の顔をしっかりと見据え、言った。
彼女の目は、怒りで染まっていた。
「...ふっざけないで...!!!
...もう!明日はこないんだよ!!
お兄ちゃんはもう、目を覚まさない!!
もう、日和さんのことを呼んでくれることもない!!
どうして!どうして!!! あなたは、目をそらすの!!!!
...あなたは、私の自慢のお兄ちゃんの、彼女でしょう...。
お願いだから、ちゃんと、お兄ちゃんを見送ってあげて...。」
怒っていたはずの彼女の目からは、
いつしか、涙があふれていた。