【短】もしもあなたが死んでしまうなら。





全てのことが終わり、


彼の家族と別れようとしたとき、

「日和ちゃん、」

と、彼のお母さんに引き留められた。


彼女の顔をみると、とても疲れ切って憔悴しているようにみえた。


「はい。」


「あのね、これ、武が事故にあったとき、車内に残っていたものなの...。

きっと、これ、日和ちゃんに向けて、のものだと思うの。

だから、もらってくれないかしら...?」


雷が落ちたような、衝撃が私を襲った。


「え...私に、ですか...?」


そう尋ねると、彼女は、「ええ。あなた宛てだと思うの。」といい、少しグシャグシャになった、小さめの紙袋を差し出した。



その紙袋には、かわいいくまちゃんが描かれていて、また、涙があふれた。

そのくまちゃんは、大分前に’このくまちゃんかわいい!’なんていって、彼に話したものだった。

「...っ、あ、りがとう、ごさいます...っ...」










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