【短】もしもあなたが死んでしまうなら。
「ううん...いいのよ。きっと武もその方が喜ぶわ...。」
そう、悲しみは残るけど、笑顔で彼女は言った。
「それとね...、武のことは、忘れていいのよ。
私たちね、日和ちゃんのこと、実の娘だ!なんてくらい、かわいいの。
だからね...、どうか、武のことを、引きずらずに、いつか、幸せになってほしいの。
...きっと、武もその方が、喜ぶはずだから...。」
続けざまに彼女はそういうと、「じゃあね、日和ちゃん。」と、最後に見慣れたあの優しい笑顔でそう言い、背を向け歩きだした。
その笑顔は、
私が初めて彼の家にいった時、見た彼女の笑顔と同じものだった。
彼女の、あの笑顔に、とても安心させられたことをふいに思い出した。
そして、彼女の笑顔がとても好きだ、ということも。