彼女の一番になる方法。
昨日はよく寝られなかった。
おかげで授業中も劇の準備中も結局頭の中は、昨日の柚子先生の顔ばかり。
キスとか髪触るのとかでこんな動揺してるなんてガキくせぇ。
次、塾に行ったら先生どんな反応するのかな。
「あ!いたいた、裕介!」
「あかり、どーしたんだよ。一応もう帰っていいんだろ?」
尊ももう帰ってるし。
「大丈夫なんだけど、配役聞いた?自分の」
「え、大道具になれば役はやらなくていいって聞いたけど」
「あー、やっぱり。
おとといさ、メロス役の大河くんが脚骨折しちゃって、サッカーで。
それで代役を裕介にしようってクラスで決めたんだけど、聞いてなかったかー」
なんだそれ。
「無理だし、劇いつだよ」
「そんなことも知らないで色々作ってたの?!
6月の模試の後だよ。
ちなみに、今回の走れメロスは原作の「真実」をテーマにしながら、クラスオリジナルで「愛」を入れてるからね!セリヌンティウス役が私なんだよ!」
「まだ時間あるか、、、
その台本って大河からもらえばよい?」
「それでもいいけど、大河君今休んでるし、わざわざ家に行くのもなぁ。
そうだ!明後日ウチくる?日曜日だけど。予備の台本あるし」
「そーしよっかな、おばさん、家にいるの?」
あかりとは幼馴染で家も近いので、幼いころからお互いの家を行き来していた。
「いるはず!一緒に夕飯も食べようよ!夜は塾ないでしょ?」
「それもいいな、おばさんがつくるハヤシライスおいしいし」
「じゃぁ決まりね!」
あかりはパタパタと教室に戻っていった。
明るいあいつはクラスのムードメーカーで結構モテる。
本人は自覚しているかわからんが。
今日、どうしようかな、塾。
会いたいような、会いたくないような。
俺も尊みたいになんかバイト始めようかなー、けど面倒くさいんだよな。
とりあえず、塾行くか。
家に帰ってもだれもいないし。