桜の下で
「菜穂ちゃんだったか!わかる子だな!直也!君の彼女は優しい子だな!」

「父さん。用事はいいから帰って。」

「まってくれよ!冬のコンサートの事だけ聞きたかったんだ!」

「ああ。それなら申し込みした。桜ヶ丘の一番広いホールを予約した。」

「どうせならもっと広い所でやらないか?!お前なら海外でも出来るはずだ。」

「海外とか行きたくない。父さんのせいで。もう予約したから取り消し出来ない。」

もう…だから父さんと会いたくなかったんだ…

「わかった…桜ヶ丘でやりたいんだろう?」

珍しく納得してくれた。いつもなら口うるさいのに。

「しかしそのかわりに来月の八月二十二日にコンサートを開いてもらうぞ?」

「は、はあ?それまで1ヶ月もないですけどどうしろと?」

「それまでに覚えろ!直也なら覚えられるだろ。だから大丈夫だ!場所はそこまで遠くない所を予約しておく!」

ふざけんな…と叫びたい。なんて勝手な親なんだよ。菜穂に関してはポカーンとしてるし…まぁそうだよな。

「どこに大丈夫の要素が?後夏休み潰す気?」

「夏休みにコンサートなどいつもの事じゃないか!それじゃあ予約しておくから宜しくな!」

「よくない。とりあえず今日もいるだろ…七瀬さん。呼んできて。」

「ああ。わかったぞ。」

「菜穂…ごめんちょっと離席する。ヴァイオリンの音を大分覚えてたから全体を楽譜を見ながらでいいからやってみて。それで確認ができたらこんどは楽譜無しでやってみて。後で音合わせしよう。」

「うん。邪魔だったら先に帰るよ?」

「後で音合わせしたいから待ってて欲しい。ごめんわがままで。」

「わかった。じゃあゆっくり練習してるね。」

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