桜の下で
もう少しするとピアノの音がリズムよく動き素早くなっていく。

ピアノにとっては最大の見せ場でもある。

素早く。リズムよく指を鍵盤に滑らせていく。

菜穂も少し素早く動く。

ここにはアレンジを加えていない。

菜穂と俺が一番気に入ってた場面でもあったから。

2人で初めて聴いた時はずっとここが好きだった。

音楽とは不思議だな。

昔は険しい音が苦手でリズムが良く動きやすいところばかり練習していた。

でも今は違う。

この曲の一部ではなくこの曲自体が好きになっている。

いつの間にかピアノの事も好きになってた。

菜穂の言った通りだった。

いや。菜穂が好きにさせてくれたんだよな。

(じゃあこれから好きになるんだね!)

その言葉が無ければ俺はピアノをやめてただろう。

音はどんどん細かくなっていく。

海の音もいつもなら聞こえるのにそんな音は無かったかのように聞こえない。

今聞こえるのはヴァイオリンとピアノの音のみ。

ピアノもヴァイオリンもそこまでおおきな音ではない。

屋内のステージではないなら響かないはず…それにもかかわらずヴァイオリンとピアノの音しか聞こえない。

そして曲はラストに向かう。
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