桜の下で
曲の終盤に入った瞬間に強い風が吹いてきた。

…あの時と同じだ。

あの日と同じような景色だ。

俺達の周りにはたんぽぽとかの綿毛がフワフワと舞っている。

なんて綺麗なんだろう。

そして風は少しずつやんでいく。

それと同時にヴァイオリンとピアノの音も消えていく。

それを見てた澄空は本当に圧巻としている

弾いていた俺も自分が弾いてたのか分からないぐらいだった。

言葉が出ない。どう言えばいいのか分からずに言った。

「菜穂…上手くなったな。」

「本当?よかった…!上手く弾けてるか心配だったんだ…」

「心配ない…いや、俺の予想以上に上手く弾けてた。」

俺褒めるの下手かも…上手く言えない。

「澄空。どうだった?」

「え?!えっと…正直何も言えません。上手すぎて…ピアノとヴァイオリンの相性は元からいいですがそれ以上にいいと感じました。」

「澄空君もいつか弾けるようになるよ!」

…これは菜穂以外に弾けないだろう。

澄空にも。他のヴァイオリニストにも。

これをほぼ一ヶ月で覚えたんだ。

菜穂は…ヴァイオリンに愛されているのかもな。

上を向くとさっき飛んでいった綿毛がフワフワと上がっていた。
< 129 / 156 >

この作品をシェア

pagetop