桜の下で

開演十分前位に菜穂からメッセージが来てそれを見る。

『今着いたよ！ステージの目の前に居る！いつもの様に演奏して！いい音色を聴かせてね！』

そう書いてあった。

ステージ裾から見ると菜穂達の姿も見えた。

やばい…久しぶりに緊張してるかも。

前まではステージでピアノを弾くのは義務みたいに思っていたけどそうじゃないって菜穂がおしえてくれた。

ならそれのお礼をする。

俺は布の上からポケットの中にあるネックレスの箱を撫でた。

まだ指輪は早いからネックレスにしただけだけど…

テレビ局の人とかびっくりするだろうな…でも…！ここで伝えるって決めてたんだ。

大丈夫…大丈夫だから…

開演のブザーが鳴る。

司会の人が喋りはじめる。

｢本日はご来場頂きありがとうございます。天才少年ピアニストと呼ばれた赤城 直也さんの演奏をどうかお楽しみ下さい。｣

そう言って司会は去っていく。

それと入れ替わるように俺はステージ上に登る。

菜穂達も前の方で見ている。

俺は観客席の方に一礼をしてピアノ椅子に座る。


『いい音色を聴かせてね！』

さっき来たメッセージの言葉が頭を過ぎる。

俺は小声で｢それ以上を聴かせるから。｣と言った。





そこからはただひたすらピアノの鍵盤に指を滑らせていった。