桜の下で
〜直也 ＆ 菜穂side〜

観客は騒然としている。

そうだろう。まだ演奏が終わるには早いから。

俺はそんなのも気にせずにマイク越しに言葉を放つ。

｢今日はお越し頂きありがとうございます。今回はある人にサプライズをさせて頂きたく､1度演奏を止めさせて頂きました。｣

観客席にいる人達はざわざわとしていた。

それはもちろん私達も。

環も一樹君も直也の発言にびっくりして目を見開いている。

そんな中でも俺はどんどん話を進める。

｢その人は僕に音楽の…ピアノの楽しさを教えてくれた凄く大切な人です。その人と出会えなかったらきっと天才少年ピアニストと呼ばれていた時でもやめていたと思います。｣

直也は少しずつ話していく。私達は誰だろう？と思いながら話を聞いている。

きっと他の観客もそうだろう。

俺は…その大切な人の名前を呼ぶ。

｢菜穂。ステージの上に上がってきて。｣

菜穂は目を丸くしてる。

呼ばれた瞬間私は時が止まったかと思った。

｢どうして…？｣

そう小声で言ってしまった。

｢菜穂！ステージに呼ばれてるよ！行ってきな！｣

環にに背中を押されステージ上に向かう。

菜穂はゆっくりステージ上に上がってきてる。

観客席の全員もテレビ局の人達も目を丸くしていた。

｢なんで…私？｣

マイクを置いて話す。

｢俺に音楽の楽しさを教えてくれたのは菜穂だよ。｣

この声は環や一樹君。ほかの観客にも聞こえてないだろう。

｢でも…演奏まだ終わって…｣

｢確かに終わってないよ。これからなんだから。｣

直也は笑顔で言う。

｢でもね。その前に伝えることあるんだ。｣
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