桜の下で
記憶の欠片
〜菜穂side〜

直也君はピアノの小さな音を一つ一つ細かく
紡いでいく。

きっとこれは…楽譜通りの音じゃない。

え?なんで?なんでそうなの?

音が1音1音の間に…アレンジが入っている。

なんでわかるんだっけ?

ここは…高い音なん…て入っていない。

わからないはずなのになんで?

ここ…には…低い…ヴァイ…オ…リンの…音…が…

なんで?ヴァイオリンの音なんてないのに…

こ…こは…私…のヴァ…イオリ…ンのソロで…

私はヴァイオリンなんか弾けないのに?

この曲…私は完全にこの曲を知っている。

何度も…何度も二人でこの曲を弾いた。

ヴァイオリンと…ピアノで…
< 48 / 156 >

この作品をシェア

pagetop