桜の下で
菜穂は2時間たっても起きなかった。

今の時間は8時。

俺はずっと菜穂の近くにいた。

起きてから自殺しようとされたら俺がいた意味がない。

そして…8時50分をすぎた頃にようやく目を覚ました。

「…んぅ…?」

「菜穂。起きた?」

「よかった。突然倒れたからびっくりしたよ。」

「え?あぁ…ご、ごめん…」

「謝ることじゃないよ。何かあったのか?」

「えっと…直也君のピアノをきいていたら…小さな男の子が頭に浮かんで…私がヴァイオリンを…弾いていて…」

間違いなく昔の俺たちだ。

俺は今すぐに抱きしめたくなった。

でもそれを必死にこらえて…菜穂にこういった。

「大丈夫だから。何かあったら俺を頼って?」

菜穂は小さく頷いた。

苦しかったのか少し涙目になっていた。

「今日はもう暗いから泊まっていきな?おばさんにも伝えておいたから。」

「え?お母さんの連絡先なんで知って…」

うわ…ヤバイ…えーーーと…

「お、おばさんに『カレシさん。何かあったら連絡してね?』って渡された。」

「そ、そっか…」

ふう。よかった。

「あ、俺。夕飯作ってくる。食べやすい物がいいよな。」

「ありがとう。」

何か簡単に作ってあげよう。
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