桜の下で
梅雨桜
〜直也side〜

俺は前まで菜穂にばれないために眼鏡掛けてた。

簡単に言うと伊達メガネってやつ?

それも今日からいらないな。

そう思って眼鏡を外す。

外すと懐かしい風景がまわりを覆った…

菜穂に教えてやらなきゃ。

俺達の大事な場所…

「ここ。俺と菜穂が出会った場所。」

丘の頂上には十メートル以上はあるであろう大きな木がそびえ立っていた。

今は六月。しかし頭の上には明るく満開に咲いている桜の花があった。

この桜は何故か必ず梅雨に咲く。

だからこの木の名前は梅雨桜。

俺が7歳位の時俺はここの根本で音楽機器でピアノの音を聞くのが大好きだった。

いつも通り桜の根本へいくと木の裏側からヴァイオリンの旋律が聞こえていた。

気になった俺は木の裏側を見てびっくりした。俺と同い年位の女の子が細かな旋律を一度もとめずに弾き続けていた。

俺はその子に魅了されたよ。それが菜穂だった。

音が早くなった瞬間に風が吹いて花びらが舞う。

あの時の光景は一瞬だったけれどあの光景を越す場所を見た事が無かったほど美しいと思った。

ヴァイオリンの音だけで風も桜も雲でさえも動かしている気すらした。
< 82 / 156 >

この作品をシェア

pagetop