桜の下で
朝はアラームでちゃんと起きた。
ケータイを見ると一樹から
「ちゃんと起きたか?」と、
メッセージが来ていた。
あいつは俺の母親か何かかよ…。
適当に「起きたよ。ばかにしてるのか?」
と送っておいた。
食パンをトースターに入れて
その間に…目玉焼きでも作るか。
入学式は9時から。
朝御飯を食べ終わると今は7時半。
バスで15分ぐらいだし何をしよう。
考えているとふとピアノが目に入る。
まだ時間もある。
バスは…8時35分のバス乗ればいいか。
俺は丸椅子の上に座り楽譜ケースを漁る。
きれいな楽譜の中に一つだけ、ぼろぼろの
楽譜を取り出す。
その楽譜はピアノ協奏曲第一番(ラフマニノフ)
の楽譜だった。
俺が小さい時に好きだったピアノの曲だ。
そして菜穂と初めて話すきっかけに
なった曲でもあった。