あたしとお義兄さん
第1章 ヤンデレ義兄の目覚め
1.ヤンデレ義兄の囲い込みから逃れることが出来るのか
「だからぁ、放っておいてちょーだいって言っているでしょおっ!」
あたし、こと三国鈴子(31)はドアの内側で声を張り上げた。
ドンドン‼︎‼︎────────扉を叩く音。
「ですから、そんな訳にはいかないって言っているでしょう。
いい加減、一緒に住んでくれませんか?リン」
耳に心地良いバリトン。
扉越しにも思わずうっとりとしてしまいそう。
いやいや、いえいえ、駄目よダメダメ。そんな場合じゃないわ。
「鈴子です!変な呼び方しないで下さい、静馬さん」
153cmの小柄な身体に扉を押し付けて鍵を掛ける。
────────かしゃん。
「『お兄さん』。もしくは『お兄ちゃん』、兄貴でも構いませんよ?」
板を隔てた向こう側にいるらしい青年はそう応じてきた。
「どうして嫌がるんでしょう。リン、って可愛い呼び方でしょう?私は思いついた時から気に入っているんです。それより、ねぇリン。こんなやり取りも兄妹らしくて楽しいですけど、一向に埒が明かないでしょう。
中に入れてくれませんか?向かい合い、じっくりと兄妹で膝を割って話し合いをしようじゃありませんか」
膝は割ってはいかんだろう!
鈴子は右手で額の髪を掻き上げて、こめかみを押さえた。
「あのねぇ、貴方とはほんの一ヶ月前に身内になったばかりで、私達、じっくり話し合うほど『兄妹』してないと思うんだけど……」
イライラを堪えて、鈴子がそう言うと、
「酷い言い草ですね。前に言ったじゃないですか。私は『妹』がずっと欲しくて、母が亡くなってから此の方、諦めかけていた処に降って湧いたこの幸運が嬉しくてたまらないって」
恨めしそうな、それでも麗しい声で『義兄』は鈴子に訴える。
「…………『本物』を母さんにお願いしなさいよ」
「お義母さんは今、50歳なんですよ?」
「高年齢出産は年々増えているそうよ」
にべも無く鈴子がそう言うと、深い溜息の気配がした。
「でも、私は……貴女がいいんです」
───────動揺────────
鈴子はきっかり20秒後に立ち直った。
この真性シスターコンプレックス万年青年は────────
問題発言、問題発言。これ以上聞いてられない。真剣に取り合うだけ、無駄。
とうとう無視を決め込もうと決心した矢先、『義兄』は最終手段に出た。
「リン、どうしても話し合う気が無いというなら仕方ありません。この手だけは使うまい、と思っていたのですが……」
その言葉の真意を確かめる間も無く、
『ザッ』という音がして、静馬がその良く通る声を張り上げた。
「だからぁ、放っておいてちょーだいって言っているでしょおっ!」
あたし、こと三国鈴子(31)はドアの内側で声を張り上げた。
ドンドン‼︎‼︎────────扉を叩く音。
「ですから、そんな訳にはいかないって言っているでしょう。
いい加減、一緒に住んでくれませんか?リン」
耳に心地良いバリトン。
扉越しにも思わずうっとりとしてしまいそう。
いやいや、いえいえ、駄目よダメダメ。そんな場合じゃないわ。
「鈴子です!変な呼び方しないで下さい、静馬さん」
153cmの小柄な身体に扉を押し付けて鍵を掛ける。
────────かしゃん。
「『お兄さん』。もしくは『お兄ちゃん』、兄貴でも構いませんよ?」
板を隔てた向こう側にいるらしい青年はそう応じてきた。
「どうして嫌がるんでしょう。リン、って可愛い呼び方でしょう?私は思いついた時から気に入っているんです。それより、ねぇリン。こんなやり取りも兄妹らしくて楽しいですけど、一向に埒が明かないでしょう。
中に入れてくれませんか?向かい合い、じっくりと兄妹で膝を割って話し合いをしようじゃありませんか」
膝は割ってはいかんだろう!
鈴子は右手で額の髪を掻き上げて、こめかみを押さえた。
「あのねぇ、貴方とはほんの一ヶ月前に身内になったばかりで、私達、じっくり話し合うほど『兄妹』してないと思うんだけど……」
イライラを堪えて、鈴子がそう言うと、
「酷い言い草ですね。前に言ったじゃないですか。私は『妹』がずっと欲しくて、母が亡くなってから此の方、諦めかけていた処に降って湧いたこの幸運が嬉しくてたまらないって」
恨めしそうな、それでも麗しい声で『義兄』は鈴子に訴える。
「…………『本物』を母さんにお願いしなさいよ」
「お義母さんは今、50歳なんですよ?」
「高年齢出産は年々増えているそうよ」
にべも無く鈴子がそう言うと、深い溜息の気配がした。
「でも、私は……貴女がいいんです」
───────動揺────────
鈴子はきっかり20秒後に立ち直った。
この真性シスターコンプレックス万年青年は────────
問題発言、問題発言。これ以上聞いてられない。真剣に取り合うだけ、無駄。
とうとう無視を決め込もうと決心した矢先、『義兄』は最終手段に出た。
「リン、どうしても話し合う気が無いというなら仕方ありません。この手だけは使うまい、と思っていたのですが……」
その言葉の真意を確かめる間も無く、
『ザッ』という音がして、静馬がその良く通る声を張り上げた。
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