あたしとお義兄さん
3.無職になりました
「ごめんなさい、茶々を入れないでちゃんと聞きます!」
再び『ぶぅん』という音と共に静寂が訪れた。
もう一度大きなため息の後、爽やかな香気の茶を一口。気持ちを落ち着かせる効果有り。
鈴子はピタリと青年を見据える。
「あたしもう完璧大人ですから、母親が再婚しよーが連れ子でで新しいお義兄さんが出来よーが、一向に構いません。
でもね、 1つだけどうしても我慢できないことがあるんですよ」
ぎん、と視線に力を入れる。
「あたしの生活のリズムを乱される事です」
義兄は“きょとん”とした顔で首を傾げている。無邪気この上ない。
鈴子のイライラは募るばかりだ。おこたをコンコンと叩く。
「何か、私たちが貴女の気に障る事を?」
そう尋ねる静馬を剣吞に見やると、義妹はつい、と顎を反らす。
「そーですわね。貴方方にとっては何でもない事なんでしょうよ。
あたしを無理矢理九州から連れ出したり、強引に前の仕事を辞めさせたり、山程の見合いをセッティングしたりする事はね!」
「それは父のした事で……」
語気荒く言い放つ義妹の心情にようやく思い当たったのか、静馬は目に悲しげな色を浮かべて弁明に入った。
「え〜え、お義兄さんはあたしに協力して、お見合いはぶち壊してくれたわね。
でも、その他のは貴方が進んでお義父さんの味方だった事、知らない訳じゃないのよ?」
「え!?」
鈴子はニヤリ、と不敵に微笑った。
「お義父さんに詰め寄ったら、そう言ってたわよ」
秀麗な眉を僅かに顰めると、静馬は何事も無かった様に紅茶をひと啜りした。
勿論、気持ちを鎮める為だ。
「いやはや、とんでもない父親ですねぇ。息子に罪を擦り付けるとは…」
「お義父さん、『アイツが言い出しっぺなんだぁ〜っ‼︎』って縋り付いてきたけど」
春ののどけさを体現する彼に鈴子がトドメを刺す。
整った顔に汗がたらり、と一滴、頬を伝ったのを 義妹は見逃さなかった。
「ま、見合いの事は純粋にあたしの将来を心配しての…ま、行き過ぎの点はあったとしても…お義父さんの好意だし、それはまだわかる範囲なんだけど、ね」
もそ、とコタツ布団を口元まで引き上げ、義兄を一瞥する。
「こないだ、お義兄さんの婚約者『候補』だとおっしゃる方が見えましてねぇ……」
鈴子はお茶請けの煎餅を両手で自分の前に持ってくる。(紅茶に煎餅─────これこそ鈴子通常運転であった)
無職と化した身に窓から差し込む陽光が眩しい。
何だって自分は真っ昼間から部屋の中で義兄と紅茶なんぞ啜ってるんだろう、と虚しく思いながら。
「いきなり切り口上で、『私は同居でも構いません』と、こうですよ。
で、あたしとしても事情が分かりませんで尋ねたんですよ。
『何ですか。そりゃ』ってね。そうしたらなんですか、アナタ。
「私と結婚して戴くには、義妹との同居に理解を求めます』と、静馬さんが仰ったそうですね。───────そーゆー話があたしの知らない水面下で進められていたとはね……」
「ごめんなさい、茶々を入れないでちゃんと聞きます!」
再び『ぶぅん』という音と共に静寂が訪れた。
もう一度大きなため息の後、爽やかな香気の茶を一口。気持ちを落ち着かせる効果有り。
鈴子はピタリと青年を見据える。
「あたしもう完璧大人ですから、母親が再婚しよーが連れ子でで新しいお義兄さんが出来よーが、一向に構いません。
でもね、 1つだけどうしても我慢できないことがあるんですよ」
ぎん、と視線に力を入れる。
「あたしの生活のリズムを乱される事です」
義兄は“きょとん”とした顔で首を傾げている。無邪気この上ない。
鈴子のイライラは募るばかりだ。おこたをコンコンと叩く。
「何か、私たちが貴女の気に障る事を?」
そう尋ねる静馬を剣吞に見やると、義妹はつい、と顎を反らす。
「そーですわね。貴方方にとっては何でもない事なんでしょうよ。
あたしを無理矢理九州から連れ出したり、強引に前の仕事を辞めさせたり、山程の見合いをセッティングしたりする事はね!」
「それは父のした事で……」
語気荒く言い放つ義妹の心情にようやく思い当たったのか、静馬は目に悲しげな色を浮かべて弁明に入った。
「え〜え、お義兄さんはあたしに協力して、お見合いはぶち壊してくれたわね。
でも、その他のは貴方が進んでお義父さんの味方だった事、知らない訳じゃないのよ?」
「え!?」
鈴子はニヤリ、と不敵に微笑った。
「お義父さんに詰め寄ったら、そう言ってたわよ」
秀麗な眉を僅かに顰めると、静馬は何事も無かった様に紅茶をひと啜りした。
勿論、気持ちを鎮める為だ。
「いやはや、とんでもない父親ですねぇ。息子に罪を擦り付けるとは…」
「お義父さん、『アイツが言い出しっぺなんだぁ〜っ‼︎』って縋り付いてきたけど」
春ののどけさを体現する彼に鈴子がトドメを刺す。
整った顔に汗がたらり、と一滴、頬を伝ったのを 義妹は見逃さなかった。
「ま、見合いの事は純粋にあたしの将来を心配しての…ま、行き過ぎの点はあったとしても…お義父さんの好意だし、それはまだわかる範囲なんだけど、ね」
もそ、とコタツ布団を口元まで引き上げ、義兄を一瞥する。
「こないだ、お義兄さんの婚約者『候補』だとおっしゃる方が見えましてねぇ……」
鈴子はお茶請けの煎餅を両手で自分の前に持ってくる。(紅茶に煎餅─────これこそ鈴子通常運転であった)
無職と化した身に窓から差し込む陽光が眩しい。
何だって自分は真っ昼間から部屋の中で義兄と紅茶なんぞ啜ってるんだろう、と虚しく思いながら。
「いきなり切り口上で、『私は同居でも構いません』と、こうですよ。
で、あたしとしても事情が分かりませんで尋ねたんですよ。
『何ですか。そりゃ』ってね。そうしたらなんですか、アナタ。
「私と結婚して戴くには、義妹との同居に理解を求めます』と、静馬さんが仰ったそうですね。───────そーゆー話があたしの知らない水面下で進められていたとはね……」