太陽のさとうさん
しばらく「うーん」と唸っていた目の前の女性は、
紙に向けられていた難しい視線を私に移した。
「ひまりさん、いいと思います!」
言葉とかわいい笑顔付きで。
「テーマの太陽にぴったりです。これで、必ずいい小説を書いてみせます!」
既に冷めてしまっているであろうミルクティを置き去りに、
彼女のトーンは上がっていく。
「いえ、それなら良かったです。私はお話を書くまでの力がないので……」
「そんなことないと思いますよ?ひまりさんならきっといいお話書けますよ、って、私が言うのもあれなんですけど」
少しばつの悪そうな顔をして、
さっきまで置いてけぼりだったミルクティに手を伸ばした。
「妄想は好きなんです。でも、それを文字にするのが出来ないんです。だから、こうして福富さんに命を吹き込んでもらえるのが一番幸せです。」
幸運が訪れそうな名前だ、と名前を呼ぶたびに思う。
「そう…ですか?ふふっ」
私が幸せだと言ったからか、女性は微笑んだ。
それに釣られるようにして私も微笑んだ。