この夏が終わっても

あの人数でも、周りがほとんど知ってる人の前で歌うのも…。俺だって緊張したのに。

この中で、里奈が歌う。


「……将馬君。
僕、里奈ちゃんに告白したよ。」

ザワザワとした周りにかき消される事もない、その言葉に俺が涼を見ると…。


「でも、残念ながらキッパリとフラれちゃったから…。」

涼は微笑えみながらそう言って、俺の胸ポケットからスマホを取り出すと…。俺の手に握らせるように渡してきた。


里奈が、涼を…フッた?

その事実も信じられなくて放心状態の俺に、涼がスマホを指差しながら言う。


「里奈ちゃんが今から、誰の為に歌うのか…。
ちゃんと分かってあげて?」

そう言われた瞬間。
大人しい、優等生というだけで昔の嫌な思い出と被っていた涼の姿が…。全く違って見えた。

今までの自分が嘘のように素直になって…。
俺はゆっくり、里奈からのLINEを確認する。
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